スイッチング電源(DC-DCコンバータ)は、高効率・小型化・高出力密度を実現できる電源方式として広く利用されています。
近年の電源ICでは、単純なPWM制御に加えて以下の機能が統合されています。
本記事では、これらを統合した高機能スイッチング電源の理論と設計ポイントを体系的に解説します。
理想的な降圧コンバータの基本関係式は
\[V_{out} = D \cdot V_{in}\]です。
ここで
となります。
PWM(Pulse Width Modulation)は
の制御方式です。
誤差アンプ出力 ${V_{err}}$ とランプ波 ${V_{ramp}}$ を比較します。
動作条件:
${V_{err} > V_{ramp}}$ → スイッチON
${V_{err} < V_{ramp}}$ → スイッチOFF
スイッチング損失は概略的に
\[P_{sw} \propto f_{sw}\]となります。
軽負荷時には導通損よりもスイッチング損失が支配的になります。
PFMでは
となります。
軽負荷時に ${f_{sw}}$ を下げることで
\[P_{sw} \downarrow\]となり効率が向上します。
メリット:
デメリット:
F-PWMは軽負荷時でも強制的にPWM動作を維持します。
特徴:
ノイズ重視用途で有効です。
一般的なロジック:
${I_{load} < I_{th}}$ → PFM
${I_{load} \ge I_{th}}$ → PWM
ヒステリシスを設ける場合:
${I_{load} < I_{th1}}$ → PFM
${I_{load} > I_{th2}}$ → PWM
ここで ${I_{th2} > I_{th1}}$ とします。
出力電圧を分圧し、基準電圧 ${V_{ref}}$ と比較します。
誤差電圧は
\[V_{err} = V_{ref} - V_{fb}\]です。
LCフィルタを含む制御対象の概略伝達関数は
\[G_{vd}(s) = \frac{V_{in}} {L C s^2 + R C s + 1}\]となり、2次系です。
LC フィルタや制御回路の遅れにより位相遅れが蓄積すると、
位相余裕は減少し、−180°に近づく。
このとき負帰還は正帰還として作用し、制御系は発振しやすくなる(不安定になりやすい)。
誤差増幅器や PWM 生成、サンプリングによる制御遅れは
この位相遅れを増加させる要因である。
補償設計では ${f_0}$ 付近の位相遅れに注意が必要です。
外側:電圧ループ
内側:電流ループ
電流ループにより制御対象は1次系に近づきます。
スイッチング周期の 1/2 周期(またはその分数)で電流が交互に揺れる不安定現象です。
サブハーモニック(分周振動)と呼ばれます。
起きている現象
特に ピーク電流モード制御+デューティ比 50% 超で起こりやすいです。
対策としてスロープ補償を加えます。
この不安定性を防ぐため、電流検出信号に人工的な傾きを加える手法がスロープ補償。
スロープ補償により、前周期の電流誤差は次周期で確実に減衰し、電流ループは安定化されます。
補償前
比較しているのは「純粋なインダクタ電流」
誤差が周期をまたいで増幅
補償後
電流信号に 右肩上がりの直線を加える
誤差が毎周期減る
前周期の誤差が減衰
「電流が増えすぎたら、より早く OFF される」ように仕向ける
人工ランプ傾き ${m_a}$ は
\[m_a \ge \frac{m_2 - m_1}{2}\]を満たすよう設計します。
ここで
です。
高性能スイッチング電源設計には
が不可欠です。
理論と実装の両面を理解することで、安定・高効率・低ノイズな電源設計が可能になります。