― アナログ回路設計視点 ―
BJTとMOSトランジスタは、増幅素子として共通の役割を持つが、
電流生成機構・小信号特性・設計パラメータの支配因子が本質的に異なる。
本稿ではアナログ設計に直接効く式のみを整理する。
BJTのコレクタ電流は
\[I_C = I_S \left( \exp\left(\frac{V_{BE}}{V_T}\right) - 1 \right)\]通常の能動領域では ( V_{BE} \gg V_T ) のため
\[I_C \approx I_S \exp\left(\frac{V_{BE}}{V_T}\right)\]ここで
\[V_T = \frac{kT}{q}\]室温では
\[V_T \approx 26 \text{ mV}\]BJTの相互コンダクタンスは
\[g_m = \frac{\partial I_C}{\partial V_{BE}}\]指数式を微分すると
\[g_m = \frac{I_C}{V_T}\]重要な点:
コレクタ電流の電圧依存性を含めると
\[I_C = I_S \exp\left(\frac{V_{BE}}{V_T}\right)\left(1 + \frac{V_{CE}}{V_A}\right)\]したがって小信号出力抵抗は
\[r_o = \frac{V_A}{I_C}\]より
\[g_m = \mu C_{ox}\frac{W}{L}(V_{GS}-V_{TH})\]または電流で書くと
\[g_m = \frac{2I_D}{V_{ov}}\]ここで
\[V_{ov} = V_{GS} - V_{TH}\]BJT:
\[\frac{g_m}{I_C} = \frac{1}{V_T}\]MOS:
\[\frac{g_m}{I_D} = \frac{2}{V_{ov}}\]室温で
\[\frac{1}{V_T} \approx 38 \text{ V}^{-1}\]一方MOSで (V_{ov}=200\text{ mV}) とすると
\[\frac{g_m}{I_D} = 10 \text{ V}^{-1}\]したがって同じ電流ならBJTの方が大きな (g_m) を得やすい。
MOS(チャネル長変調):
\[r_o = \frac{1}{\lambda I_D}\]BJT:
\[r_o = \frac{V_A}{I_C}\]BJT設計:
MOS設計:
BJT:
\[\frac{g_m}{I_C} = \frac{1}{V_T}\]MOS:
\[\frac{g_m}{I_D} = \frac{2}{V_{ov}}\]室温では
\[\frac{1}{V_T} \approx 38\ \text{V}^{-1}\]MOSで (V_{ov}=200\text{ mV}) とすると
\[\frac{g_m}{I_D} = 10\ \text{V}^{-1}\]→ 同じ電流ならBJTの方が大きな (g_m)
→ 低電流・低電圧条件で有利
小信号近似では
→ 差動対・アンプの歪み設計が楽
BJTの主要設計パラメータ:
MOSの主要設計パラメータ:
→ BJTは「電流だけ見ればよい」設計になりやすい
→ センサフロントエンド、低雑音アンプで有利
BJT:
\[r_\pi = \frac{\beta}{g_m}\]→ 入力に電流が流れる
→ 高インピーダンス信号源には不利
MOS:
→ 低消費電力デジタル用途では不利
→ 現代の主流プロセスはCMOS
→ (V_{BE})、(I_C) が温度で大きく変化
→ 補償回路が必須
(※逆にこれを利用するのがバンドギャップ回路)
BJT設計:
MOS設計:
BJTを理解しているかどうかは、
MOSアナログ回路の「なぜそうなるか」を理解できるかどうかに直結する。
アナログ設計では、
「どの物理量が支配的か」を理解することが本質である。