バンドギャップリファレンス回路・定電圧源・定電流源(アナログ回路設計メモ)

目的:IC内部で「温度や電源変動に強い基準」を作るための考え方を、回路の形(トポロジ)と設計観点(誤差要因)から整理する。
注:数式や係数は一般的な近似に基づく説明で、プロセスや温度範囲で係数が変わる前提です。


0. なぜ“基準”が必要か

アナログICでは、増幅器・ADC/DAC・LDO・PLL・センサIFなど、ほぼ全てが「何かの基準」に依存します。

“定電圧源/定電流源”は、この基準の作り方・配り方の総称、と捉えると整理しやすいです。


1. 定電圧源(Voltage Reference)の基本

1.1 代表的な選択肢

1.2 “定電圧”の意味は「理想電源」ではない

実際は、次の揺らぎが必ずあります。


2. 定電流源(Current Reference / Current Source)の基本

2.1 定電流源を作る王道:抵抗に“定電圧”をかける

最も直感的には

ただし実際はRが温度係数(TCR)を持つため、

2.2 MOSだけで作る定電流(ただし温度依存は出やすい)

2.3 電流ミラーは“配る道具”

Irefを作ったら、電流ミラーで各ブロックへ配ります。ここで重要なのは:


3. バンドギャップリファレンス(BGR)の中身

3.1.1 PTAT回路

\[I_0 = I_s exp(\frac{qV_X}{kT})\] \[I_0 = NI_s exp(\frac{qV_Y}{kT})\] \[I_0 = \frac{V_X-V_Y}{R}\]

を解いて、

\[I_0 = \frac{kT}{qR}log(N)\]

(参考: Razavi 応用編)

3.1.2 コア原理:CTAT + PTAT = ほぼ温度フラット

BJT(寄生PNPなどを含む)を使う典型BGRでは:

よって、抵抗比でスケールして [ V_{REF} = V_{BE} + \alpha \Delta V_{BE} ] とし、一次温度係数が最小になるように α(抵抗比)を選ぶのが基本です。

典型的に、室温近辺でうまく合わせると Vref ≈ 1.2V 近辺になります(シリコンのバンドギャップ由来の“偶然の一致”に近い背景があります)。


3.2 典型トポロジ(ざっくり)

よくある“抵抗2本+BJT2個”型は、以下の考え方です:

  1. BJT A と B に 電流密度比 N を作る(面積比 or 電流比)
  2. その差のΔV_BEを抵抗に載せて PTAT電流を作る
    [ I_{PTAT} = \frac{\Delta V_{BE}}{R} ]
  3. PTAT電流を別の抵抗に流して PTAT電圧に変換し、V_BEに足す
    [ V_{REF} = V_{BE} + I_{PTAT}\cdot R_2 = V_{BE} + \frac{R_2}{R_1}\Delta V_{BE} ]
  4. これを成立させるために アンプ(誤差増幅器)でループを組む

“アンプ+BJT+抵抗”で閉ループを作るので、BGRは実質「小さなアナログ制御系」です。


3.3 起動回路(スタートアップ)が必須になりがち

BGRのループ方程式は、ゼロ電流でも成り立つ(全素子がOFF)場合があり、

そこで起動回路を入れて、


3.4 誤差要因(設計で効いてくるところ)

BGRを“式どおり”作っても、実際のVrefは以下で動きます。

(A) 抵抗比誤差(最重要級)

(B) BJTの理想式からのズレ

(C) アンプのオフセット

(D) 曲率(2次温度特性)

一次のTCは相殺しても、V_BE自体の非線形成分で温度カーブが残ります。
必要に応じて

(E) ノイズ


4. 定電圧源としてBGRを使うときの実務ポイント

4.1 “1.2V”をそのまま使えないケース

低電圧(例:1.0V動作)だと、1.2V基準はそのまま出せません。

4.2 PSRRの取り方

BGRコアだけでPSRRを稼ぐのは難しいことが多く、


5. 定電流源の設計ポイント(BGRとセットで考える)

5.1 Iref = Vref / R の落とし穴

5.2 電流ミラー配線・レイアウト


6. 最小の設計フロー(思考の順番)

  1. 仕様を固定
  2. アーキテクチャ選択
  3. 誤差予算(エラーバジェット)
  4. 回路設計
  5. レイアウト戦略
  6. シミュレーション
  7. トリム設計(必要なら)

7. 参考:用語ミニ辞典


8. 次に深掘りすると良い論点(設計者視点)


付録A:超ざっくり設計の勘所(一次TCの合わせ方のイメージ)

一次的には、

ただし現実には