オペアンプ基礎

1. はじめに

オペアンプ(Operational Amplifier)はアナログ回路の基礎デバイスであり、
その本質はトランジスタレベルの増幅段構成とフィードバック理論 にある。

本記事では、以下を体系的にまとめる。


2. オペアンプの内部構成(トランジスタレベル)

一般的な CMOS オペアンプは、以下の 3 段構成で理解できる。

  1. 差動増幅段(入力段)
  2. 電圧増幅段(ゲイン段)
  3. 出力段(バッファ)

2.1 差動増幅段(入力段)

差動入力を ${v_d = v_+ - v_-}$ とする。

差動対では入力は左右に等しく分配されるため、

となる。

MOSFET の小信号式 ${i = g_m v_{gs}}$ より、電流変化は

となる。

差動電流(左右の電流差)

\[\Delta I_{\text{diff}} = g_m v_d\]

片側に現れる電流変化

\[\Delta I = \frac{1}{2} g_m v_d\]

OPアンプの入力段では、電流ミラーを介して片側の電流変化が次段へ伝わるため、
以降の利得計算では ${g_m v_d / 2}$ を用いる。

2.2 電圧増幅段(ゲイン段)

MOSFET の単段増幅器の利得は

\[A_v = g_m r_o\]

で近似される。

多段構成では総合開ループ利得は

\[A_{\mathrm{OL}} \approx A_1 A_2\]

となる。

2.3 出力段(バッファ)

出力段は負荷を駆動するための段であり、低出力インピーダンスと電流供給能力を提供する。


3. 理想オペアンプと実オペアンプ

3.1 理想オペアンプの仮定

このとき、負帰還をかけると

${v_+ \approx v_-}$

が成り立つ(仮想短絡)。

3.2 実オペアンプの特徴

特に 開ループ利得と周波数特性 が安定性に直結する。


4. フィードバックと閉ループ利得

閉ループ利得は

\[A_{\mathrm{CL}} = \frac{A_{\mathrm{OL}}}{1 + A_{\mathrm{OL}} \beta}\]

ループゲインは

\[T = A_{\mathrm{OL}} \beta\]

ループゲインが十分大きいとき

\[A_{\mathrm{CL}} \approx \frac{1}{\beta}\]

となる。


5. 周波数特性と極・零点

5.1 開ループ利得モデル

\[A_{\mathrm{OL}}(j\omega) = \frac{A_0}{1 + j\omega / \omega_p}\]

5.2 ゲイン帯域幅積(GBW)

\[\mathrm{GBW} = A_0 \cdot f_p\]

閉ループ利得を上げると帯域が狭くなる。


6. 安定性と位相余裕

ループゲイン

\[T(j\omega) = A_{\mathrm{OL}}(j\omega)\beta\]

位相余裕 PM は

\[\mathrm{PM} = 180^\circ + \angle T(j\omega_{0dB})\]

一般的な目安:


7. 位相補償(ミラー補償)

ミラー補償では、補償容量 ${C_c}$ により低周波側にドミナントポールを生成する。

7.1 ドミナントポール

\[\omega_p \approx \frac{1}{g_{m2} r_{o2} C_c}\]

7.2 ゼロ(ミラー効果)

\[\omega_z \approx \frac{g_{m2}}{C_c}\]

右半平面ゼロ(RHPZ)となる場合は直列抵抗で補償する。


8. LTspice による解析

8.1 開ループ Bode プロット

8.2 ステップ応答


9. CMOS オペアンプの簡易設計例

9.1 仕様例

9.2 入力段の gm 設計

\[\mathrm{GBW} \approx \frac{g_{m1}}{2\pi C_c}\]

例: ${\mathrm{GBW}=20\ \mathrm{MHz}}$, ${C_c=2\ \mathrm{pF}}$

\[g_{m1} \approx 0.25\ \mathrm{mS}\]

9.3 ゲイン段の利得設計

ドミナントポールを ${10\ \mathrm{kHz}}$ に置くと

\[A_{\mathrm{OL}} \approx \frac{20\ \mathrm{MHz}}{10\ \mathrm{kHz}} = 2000 \approx 66\ \mathrm{dB}\]

9.4 補償容量の初期値

\[C_c \approx \frac{g_{m1}}{2\pi \mathrm{GBW}}\]

9.5 出力段の設計

スルーレートは

\[\mathrm{SR} \approx \frac{I_{\mathrm{bias}}}{C_L}\]

負荷容量とバイアス電流のトレードオフを考慮する。